弘善会の言語聴覚士になりました 同期対談

Q.お二人が言語聴覚士(ST)になったきっかけを教えて下さい。

田原ST

高校生の時、祖父が脳梗塞を患い、片麻痺と嚥下障害が後遺症として残りました。お菓子が大好きだった祖父が、お汁のとろみを制限するぐらい嚥下障害の症状がでていて、食事が取れなくなりました。その際、言語聴覚士のリハビリを拝見し、その後お見舞いに行った時、祖父がお菓子を食べられるようになっていました!『リハビリの力ってすごい』と思いました。それが言語聴覚士を目指すきっかけでした。

髙橋ST

幼少期、病院で診察を受ける機会があり、その時優しかった医療従事者の方の影響で、医療職に興味を持ちました。また、母が医療職に従事しており話を聞く中で、言語聴覚士のお仕事を知りました。職種として知名度は高くないのですが、調べれば調べるほど『こういうお仕事があるんだな』と、言語聴覚士の必要性を強く感じ、私もなりたいと思ったのがきっかけです。

Q.実際に言語聴覚士になって目指していたイメージと合致しますか?

田原ST

今ふりかえってみて、学生の頃は言語聴覚士の仕事をイメージできていなかったと思います。実際に急性期病院と老健施設で言語聴覚士として働いてみて『人生に寄り添っている』と感じます。『話す』『食べる』は生きていく上で、すべての人に本当に大切なことだと強く感じます。

髙橋ST

私も働いてみて、『話す』『食べる』の大切な機能に携わる仕事で、本当に責任がある仕事だと思っています。嚥下ひとつで大きな事故になったりする怖さに、今責任の重さを非常に強く感じています。実際働くまでのイメージとは違った部分もあります。

Q.今の職場(矢木脳神経外科病院 リハビリ科)(アロンティアクラブ リハビリ部)を紹介して下さい。

田原ST

私は老健アロンティアクラブで入所とデイケアを兼任しています。入所の利用者様は嚥下障害の方が多い印象があり、介護度も重度の方がおられます。アロンティアクラブは超強化型の老健で、在宅復帰を目指す利用者様もいらっしゃるので、まだまだ関わり方に日々悩みます。利用者様の方向性に沿ったリハビリを考えるのが非常に難しく、関わり方も複数あります。デイケアでは在宅で生活する方々との関わりになりますので、趣味や好みに沿ったリハビリで利用者様の意欲を継続できるように意識して従事しています。

髙橋ST

私は、矢木脳神経外科病院で急性期病棟と地域包括ケア病棟と外来を兼任しています。

発症直後の患者様の不安感のケア等、精神面に寄り添うことの重要性を常に感じています。急性期なので患者様は早期社会復帰を希望されることが多く、それが必ずしもご家族様のご意向と合致するものではない場合もあります。障害の重さにもよりますが、その兼ね合いをとり、関わる難しさに日々悩んでいます。

Q.今、お仕事をしていて大変だな…うまくいかないな…困っているな…を、教えて下さい。

田原ST

課題点ですよね。以前、アロンティアクラブに転職するまでは急性期に勤めていました。急性期は、患者様の次のステップが回復期への転院や、自宅復帰となる退院で、目標が明確で評価目的で入ることが多かったのですが、老健に入所されている利用者様の次のステップは、様々です。その様々な目標に向かい、利用者様・ご家族様のご意向を伺い、関わるすべての職種から色々な意見が飛び交います。利用者様・ご家族様の最善の目標に向かい、老健では短期集中が切れる3ヵ月の期間で目標を設定する事が非常に難しいです。時間を無駄にしないよう意識しています。

奥山介護士

課題点ですよね、以前、アロンティアクラブに転職するまでは急性期に勤めていました。急性期は、患者様の次のステップが回復期への転院や、自宅復帰となる退院で、目標が明確で評価目的で入ることが多かったのですが、老健に入所されている利用者様の次のステップは、様々です。その様々な目標に向かい、利用者様・ご家族様のご意向を伺い、関わるすべての職種から色々な意見が飛び交います。利用者様・ご家族様の最善の目標に向かい、老健では短期集中が切れる3ヵ月の期間で目標を設定する事が非常に難しいです。時間を無駄にしないよう意識しています。

Q.多職種でのディスカッションで、方向性や考えの違いから意見が異なることもありますか?

田原ST

そうですね。まずは利用者様・ご家族様の目標も必ずしも同じではないので、というのも、ご家族様は利用者様への介助度をいかに減らせるかが目標ですが、利用者様はご自身の好きなものを食べたい・飲みたい・生活をより良くしたいということが目標で、双方の目標の着地点を見出すことにとても苦労しています。そのような時、私はまだまだ経験が浅いので、積極的に他職種担当の理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・介護支援専門員・栄養士に相談し、また内容をフィードバックして経過を伝えています。

他職種間で意見が異なる時にも(自分の思いを)言っちゃっています(笑)。経験は浅くても、私を担当言語聴覚士(ST)として関わってくださるので、気付いたこと、思ったことは何でも言っちゃいます(笑)。ぶつかるまではいかないですが、妥協せずに利用者様を思う気持ちを大切に伝えています。

その環境下では、何よりも私のSTアドバイザー(アロンティアクラブの頼れるベテラン言語聴覚士の先輩)を頼りに、多い時では1時間~2時間(笑)も質問し、先輩の考え方やご見解を参考にさせて頂いています。私にとって本当になくてはならない存在です。

髙橋ST

私は、矢木脳神経外科病院で急性期勤務なので、症状や病態が悪化したり、また目に見えて改善したりと、『今日はどう?』『明日はどう?』と一日一日で異なることがあり、自分の経験では予想できなかったことが日常的に起こり、大変だと感じます。

田原さんからも目標の設定の部分で大変だと感じるとお話がありましたが、急性期では、患者様が突然の発症や予期せぬ入院により、『一日も早く自宅に帰りたい』と思われる方が多いですが、その目標はご家族様と必ずしも合致せず、『施設に入ってもらいたい』ご家族様との方向性の違いに関して、毎回どのように折り合いをつけ、どうすれば納得して頂けるか、本当にこの方向性が一番良いのかを考えるのが本当に大変だと感じます。

奥山介護士

ボディメカニクスを考え自身の身体をいたわりつつ介護をするとなると知識や技術が必要だとあらためて感じました。

古割介護士

私は改めて基本的な声かけが一番大事だなという事を感じました。

実務者研修時に受けた実技で、介護を受ける側に立ち、声かけなく介護を受けた際とても不安を感じました。当たり前のことですが改めて大切さを感じました。

Q.髙橋さんが方向性を考える際、どなたにご相談されますか?

髙橋ST

一日のリハビリ内容や目標、どのような施術を行った等の報告や相談は、指導して頂くSTの先輩にしています。患者様の目標や方向性は担当PT・OTへ、嚥下については栄養士の先生にもお話を伺います。ただ私自身、まだまだ経験が浅く、伝えたいことや不安に思っていること、確認したいことをうまく伝えることができずにいて。

田原ST

わ~分かる。私も以前急性期で働いていたので、予後の予測ができず、いつ状態が悪化するか分からないから、多職種の意見交換の時も、ディスカッションやSTとしての意見を述べるより、『答えを聞いてしまう』『判断を任せる』という感じでした。なので、もやもやが残るのはすごく分かります。

髙橋ST

田原さんのおっしゃる通りで、PT・OTの先生方は在宅復帰優先度が高く、もちろん急性期から退院・在宅復帰が最優先となりその目標を第一に考えて進めないといけないのですが、みんなの意見に従うだけではなく、担当STとしては自分の考えを言えるようにしないと、という葛藤があります。

Q.今、お仕事していて楽しいな!やりがいがあるな!を教えて下さい。

髙橋ST

急性期での働き方で、やはり一番のやりがいは患者様が回復していく様子を間近で見られることです。患者様と回復過程を一緒に過ごし、共感できることで『ありがとう』とお礼を言ってもらえる瞬間はとても嬉しいです。まだまだ未熟な私の関わりでも、回復が見て感じられる瞬間は、少しでもお役に立てているという実感に繋がっています。毎日一日はあっという間ですが、患者様と言語聴覚士として関わっている時間は自分にとって本当にやりがいのある時間を過ごさせて頂いています。

田原ST

アロンティアクラブに入職して、正直毎日がいつでも楽しいです(笑)。

楽しく仕事をさせて頂いていますが、特にやりがいを感じるのは症状やご自身の状態を心理面で重たく受け止め、とても暗くなっておられる利用者様がリハビリを重ねることで、段々と笑顔も増え『今日はありがとう』とおっしゃって頂けるようになった時はとても嬉しいです。

利用者様はやり場のない『もやもや』を抱えておられ、少し他者に当たってしまわれるような方も、リハビリ後お話をお伺いした際、泣きながらご自身の胸の内をお話して下さることもあります。言語聴覚士として話すことに関わることから、利用者様とこういう時間がとれるのかな、とも思います。心のケアの部分でも本当に貴重で、今後も大切にしていきたいと思います。

Q.髙橋さん【アロンティアクラブ田原さんに聞きたい事】はありますか? 

髙橋ST

私は、急性期しか経験がなく老健の仕事のイメージがないのですが、お仕事はどんな感じですか?

田原ST

病院は次々に患者様の対応に入りますが、老健は集団で一緒に施術する事が多いなと思います。病院のようにドクターにすぐ相談というのは難しいのですが、訪問リハビリの先生と一緒に伺ったり、栄養士の先生がミルラウンドを行ったり、利用者様に対して行っていることは思っていたよりも充実していると感じます。あと、老健に来て自分の想像と違ったのが、思ったより症状が重い利用者様が多いなと思いました。維持期の利用者様が多いかなと思っていたのですが、意外とお若い方も多い。本当に様々な年齢層で、更に医療行為が必要な方も入所されるので、利用者様は様々。本当に1日があっという間に終わってしまいます。

髙橋ST

入所・通所を兼務しているお話しを聞かせてもらいましたが、1日の流れはどんな感じですか?

田原ST

朝出勤したら、朝礼係が決まっていて当番は他職種の申し送りに参加します。その後リハビリ朝礼を行います。11:30ぐらいから食事評価に入ります。入所の利用者様をリハビリに回り、通所の利用者様もリハビリに回り、カルテを書いて業務終了です。1日はあっと言う間ですね(笑)。もう4時?!という日の方が多いです(笑)。

Q.田原さん【矢木脳神経外科病院 髙橋さんに聞きたい事】はありますか? 

田原ST

転職で急性期からもう一度急性期に行ったのはなぜですか?

髙橋ST

転職前の病院では、急性期と回復期を経験しました。その経験でも、急性期での患者様との関わりの方が楽しく、やりがいがありました。長く深く密に患者様と関われる回復期でも沢山の学びがありましたけど、よりいろんな症状や病態が見られ、また回復する過程に一番関われる急性期で仕事がしたいと矢木脳神経外科病院を選びました。

田原ST

今後、髙橋さんはどうしていきたい等目標がありますか?

髙橋ST

もっともっと急性期で知識を深めて、自分の意見を伝えていきたいと思います。やはり今後も急性期で働きたいというのは変わらなくて、もっと経験を積んで今は先輩方や担当PT・OTに判断をすべて任せてしまう状態だけど、ST主任や先輩から沢山学んで、自分の考えや疑問を積極的に言えるようなりたいです。

田原さんは、今後やりたいことや目標ありますか?

田原ST

私は今年通所と入所に携わったので、今後訪問リハビリに挑戦していきたいです。

来年度から新しい仲間(ST)も入って来てくださる予定なので、週2日は訪問リハビリを担当することになります。新たな挑戦です。訪問リハビリは一人で全部判断しないといけないので、リハビリにおけるゴールのような感じだと思っていてドキドキしています。まずはアロンティアクラブから在宅復帰された利用者様の訪問リハビリとして携わりスモールステップ踏みながら頑張っていきたいと思います。

Q.今回の同期対談はいかがでしたか?

楽しかったです。顔を見てお話できて安心しましたし、とても刺激になりました。

働き方は病院と老健で異なっても、悩みや思いは共通する部分が多くて、またお話を聞き合えたらと思います。

また病院にも遊びに伺いたいです!今日は、ありがとうございました。

梅田看護部長

研修にただ教えてもらおうと思って来たらダメだと思い、考え方を教えて、一緒に考えるような研修をしています。

松村師長

認定看護師教育課程の研修もただ教えてもらう感じではないです。看護を教えてくれるというよりは、自分たちで調べて考えて発表する形式の研修で、考え方や考えるという姿勢を身に着けることが出来ました。自分も元々は受け身で教えてもらうという感じが強かったですが、認定看護師の教育課程に行ったら、自分でどんどん動いて考えていかないといけないなという考えが強くなりました。自分がスタッフに対して研修を行う時も、実践的なシュミレーションなどの研修を増やしていきたいなと思っています。そして、認定看護師として自分が活動する事で、病院の看護師の更なるレベルアップを図れればと思っています。
スタッフへの研修も段階を踏んでレベルアップ出来るように設定しています。新しく入職してくる看護師全員に、脳卒中や脳卒中治療についての講習、その上でこんな看護をしたいという想いを伝える研修をしています。そのため新しく入っても、脳卒中について知識を身に着けられる環境作りをしています。

梅田看護部長

次の段階としては、脳卒中の神経症状がどういう風に出るのか、その患者様をどう看させていただくのかという研修をしています。実際に模擬の患者様を題材に、この症状は何の病気だろう・・・どんな看護が必要だろう・・・などを考える研修です。さらにその上の段階である認定看護師の院内認定では、自分自身がわかっていることは前提で、周囲のスタッフをどういう風に指導していくのか。なるべく同じ人に何段階かに分けて研修を受けてもらう事で、より知識が定着するようにしています。

研修を受ける事で何か残ってくれたらと思いながら、どんな研修がより良いのか私自身も模索しています。研修を開催すると、参加者から「楽しかった」と言う声も聞くと、自分自身も楽しいです。研修が自主的に勉強したり本を開いてみるきっかけになって、その姿勢が定着してくれたらいいなと思っています。

松村師長

研修を受けた人が、研修資料を使いながら仕事をしている姿を見ると、私も嬉しいですし、研修を実施するモチベーションになっています。

Q.脳卒中連携パスについて

松村師長

他の病院大阪市の色々な病院の認定看護師が集まる、脳卒中連携パスの認定看護師のワーキンググループがあります。大阪市内にある急性期や回復期の病院や維持期のクリニックが加盟し連携しています。その会議では、病院の垣根を越えてどう活動していこうか話し合いをしています。脳卒中は急性期だけでは完結しない場合が多いので、そこをどう看護で繋いでいけるかを話し合い、勉強会の開催などをしています。
脳卒中連携パスの入退院支援パンフレットも作成しています。通常、病院内だけで使用するパンフレットで患者様へ指導をしていると思うのですが、脳卒中連携パスWGで作成したパンフレットであれば急性期から回復期、維持期へと継続して使用することができます。例えば患者様が急性期の病院から回復期の病院に移る際、そのパンフレットを持っていくことで回復期の病院で回復期の看護師さんがそのパンフレットを使いスムーズな流れで看護ができます。最終的にはそのパンフレットを家に持ち帰る。そういった流れの入退院指導が出来れば、という活動にも力をいれています。

Q.これから認定看護師を目指す人へのアドバイスを

梅田看護部長

認定看護師の取得は大変でしたが、仕事がより楽しくなりました。スタッフの指導などやる事は確かに増えましたが、知識・技術が増える事で今までよりも考えることが増えたり、看護の幅が広がることで、より深く関わる事が出来るようになり、充実感や達成感をより感じるようになりました。

松村師長

「楽しいは大変の裏返し」だと思います。大変な思いをして一生懸命やったからこそ「やっと出来た!楽しい!」となるんだと思います。どうしたらいいだろうと悩んだり、どんな研修をしたらみんなにわかりやすいだろうと考えて取り組むからこそやりがいを感じるのではないかと思います。

梅田看護部長

認定看護師の研修に行こうと思うと研修に6~7ヶ月行かないといけないので、院内で認定看護師を育てようという取り組みもあります。公益社団法人 日本看護協会が行っている認定看護師とは別に、矢木脳神経外科病院内で独自に「認定看護師の院内認定」という研修と資格制度を設定しています。参加希望者に話を聞くと「ここまで深く考えて看護出来ていなかった。より考えながら行うと楽しい」と言う声もありました。 また、院内の他部署と勉強会を開く事も増え、部署間のコミュニケーションが増えたことも良い効果だと思います。


今後、認定看護師がもっと増えて欲しいです。「ここまでの看護で大丈夫」と思ってしまうのではなく、もっと上を目指していける空気が広がるといいと思います。

松村師長

そして認定看護師が増えることだけではなく、みんなの意識が高くなることでコアとなる人が増え、スタッフ全体、病院全体の力の底上げになっていくと思います。

認定看護師になりたい!と思う人は、矢木脳神経外科病院に来たら、後押ししてくれるし、それを支援してくれます!やる気のある人はここに来て、ここでやりたい看護を実現出来ます。また、そのような方が来て下さる事も希望しています。

梅田看護部長

高齢化が進んできていますので、脳卒中以外にも摂食・嚥下障害や感染管理、認知症などの他の分野の認定看護師も増えたらと思います。認知症、感染や褥瘡など・・・全てが関係していますし、それぞれがお互いの知識を活用して協働する事で、さらにこの病院の看護の力の底上げに繋がっていったらいいなと思います。